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「プログラミングを意識しない」安全性シグナル解析手法の構築

  • 2026.2.2
  •                        

    論文PDFをダウンロードする (J-STAGE)

     

    はじめに

    岐阜薬科大学 病院薬学研究室の野口 義紘 准教授らの研究グループによる論文が、日本医薬品情報学会の学会誌『医薬品情報学』(Vol. 27 No. 3)に掲載されました。
    本論文では、KNIME Analytics Platformを活用し、プログラミングの専門知識がないユーザーでも、大規模な有害事象自発報告データベースを用いた高度なシグナル検出が可能になる手法について論じられています。

     

    第27回日本医薬品情報学会総会・学術大会発表スライド:KNIMEによる安全性シグナルスコア算出ワークフロー概要
    「第27回 日本医薬品情報学会 総会・学術大会」時の発表スライドより抜粋

     

    論文の概要

    論文タイトル: ユーザーがプログラミングを意識しない安全性シグナルのスコア算出手法の構築
    (Developing a Method for Calculating Safety Signal Scores from Spontaneous Report Databases without Users Being Aware of Programming)

    著者: 野口 義紘, 増田 陸人, 森 卓之, 宇佐美 英績, 吉村 知哲
    掲載誌: 医薬品情報学 27巻 (2025) 3号, p. 91-104
    岐阜薬科大学 病院薬学研究室: https://www.gifu-pu.ac.jp/lab/byoyaku/

     

    課題:大規模データ解析における「プログラミングの壁」

    医薬品の適正使用やファーマコビジランス(PV)において、大規模な有害事象自発報告データベース(JADERなど)からのシグナル探索は日常的に行われています。
    しかし、数百万件規模のビッグデータを解析し、統計学的な評価を行うためには、R言語やSQLといった高度なプログラミングスキルが必要となり、現場の薬剤師や臨床家にとって大きな障壁となっていました。既存の商用解析ソフトは高額であり、多くの病院や薬局での導入が困難であるという課題もありました。

     

    解決策:KNIMEによる「高度な統計解析」の自動化

    野口准教授らの研究グループは、この課題を解決するために「KNIME Analytics Platform」を採用し、ユーザーがプログラミングを意識することなく操作できる解析フローを構築しました。
    本手法の特長は、操作の簡便さだけでなく、その解析内容の高度さにあります。

    • ベイズ統計学的手法の導入: 従来の頻度論的確率に基づく指標(PRR, ROR)に加え、より高度なベイズ統計を用いた指標「Information Component (IC)」の算出を実現しました。
    • 相互作用シグナルの検出: 単剤の評価だけでなく、薬物相互作用のシグナル指標である「Ω shrinkage measure」の算出も可能です。これは従来の簡易的なアプリケーションでは実装が困難だった機能です。
    • R言語の裏方化: 内部的にはR言語(R Snippetノード)のロジックを活用しつつも、KNIME上で完全にラップすることで、ユーザーは一切コードを書くことなく高度な解析を実行できます。

     

    【動画】シグナルスコア算出の実例

    学会発表時に公開された、実際にKNIMEを用いて算出を行うデモ動画です。調査対象を入力しクリックするだけで、複雑な統計解析が実行される様子をご覧いただけます。

     

    成果:低コストかつスケーラブルな解析環境の実現

    本研究では、異なるスペックのPCを用いて処理時間の検証も行われました。その結果、一般的なスペックのPC(メモリ8GB程度)であっても、データベース読み込み後であれば、単剤スコアは40秒未満、相互作用スコアであっても1分強で解析結果が得られることが確認されています。
    KNIMEを活用することで、高価な専用システムを導入することなく、低コストで拡張性の高い解析環境を構築できることが実証されました。

    これにより、プログラミングに不慣れな医療従事者であっても、「意識せずに」科学的根拠に基づいた安全性評価を行うことが可能となり、医療現場におけるデータ活用の民主化を推進します。

     

    なぜ「KNIME」なのか?

    本研究においてKNIMEが選定された理由として、以下の点が挙げられます。

    • R言語との親和性: 統計解析に強いR言語をバックエンドで動かしながら、GUIで操作性を担保できる点。
    • コストパフォーマンス: 原則無料(オープンソース)であり、導入のハードルが低いこと。
    • 透明性と再現性: ノードによる処理フローが可視化されており、ブラックボックス化を防ぎながら、誰が実行しても同じ結果が得られる点。

     

     

    本研究の詳細は、J-STAGEにて全文公開(オープンアクセス)されています。
    以下のリンクより、どなたでも無料で閲覧・ダウンロードが可能です。

     

    KNIME は無料でダウンロードが可能です。
    ぜひお試しください。

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